私は町の写真屋で、毎日写真を焼き付けています。「写真を焼く」というのは、薬品をコートした紙(印画紙)に、撮影フィルムを通し、光を照射することから、そう言われています。写真は撮る時も、プリントする時も、光が重要な要素。写真が “光の画” と呼ばれる所以もそこにあります。
人はどうして写真を撮るのでしょう。実証記録としての写真を除けば、残したい瞬間に出会うから、シャッターを押す。だから写真には、1カットも無駄なものはありません。ピンぼけだって、他人からは理解不能の写真だって、残したいから写真としてそこにある。誰かの写真を目にしては、撮られた方の心の動きを感じ、胸が熱くなることもしばしば。お一人おひとりの想いを受け止めながら写真屋の日常は続きます。
この春、モノクロフィルム国内生産終了の報せが届きました。誰もが自分のカメラで写真を撮ることができるようになったのは、モノクロフィルムがはじまりでした。フィルムや印画紙は、いつかなくなるのかもしれません。その前にモノクロの手焼きプリント作業を体験できる機会を作りたい!という想いで、ナガサキリンネで写真のワークショップを企画するに至りました。暗室で像(=光の画)が浮かび上がる瞬間の感動を味わっていただけると嬉しいです。「写真を焼く」ことに触れるワークショップ、ご参加をお待ちしております。
文・写真 ― カメラのフォーカス 前田奈緒美
前田奈緒美
1967年福岡県生まれ長崎市育ち。20代半ばから町の写真や「カメラのフォーカス」で始める。写真と長崎をもっと好きになるべく、月一撮影会を実施している。