ヒトとモノの間に



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 夜が長くなるこの季節、私は、まどみちおさんの「ものたちと」という詩を心に留めておきたくなります。
 私は長崎市内で作陶をしていますが、最近、仲間の薪で焚き上げる穴窯 に作品を入れていただく機会がありました。仕事を終えて夜の山へ。私が到着する頃には窯詰めも終盤、集う方々への挨拶もそこそこに作品を窯の中へ。煉瓦と土で入り口を塞ぐと自然と祈る気持ちになり手を合わせていた私。
一昼夜薪をくべ、ゆっくりと温度を上げていく。炎は空気を食べ、ゆらぎ、山積みの薪は減り灰になる。熱量、炎のエネルギーを全身に浴びました。
 夜の暗さや、朝焼けのしっとりした空気を特別なものに感じ、陶芸が、火・土・石・植物・水、自然のものから成っていることさえ忘れている自分に気が付きました。素材がよそ行きの遠い存在になっていたのだと思います。
 食卓に並ぶ器が、元は土や石でできていることを頭では知っていても、素材の感触を手や体全体で感じる機会があれば、何かが変わるかもしれません。
自然の大きな流れの中で「ヒト」と、人が作り出した具体的な形である「モノ」が繋がったとき、人は豊かさを感じるのではないでしょうか。例えばよく知る器に地元の食材を使った料理を盛る時。庭に咲いた草花を生ける時に。

 「めぐりつながるわたしのくらし」
 私はヒトとモノの間に大切な何かがあると思っています。
そしてそんな時に、まどさんの詩を読みたくなるのでした。

文―coffee&clayworks笠 竹下梨沙
写真―okapi 佐藤恵、竹下梨沙

竹下梨沙
1978年大牟田市生まれ。長崎市内で珈琲店を営みながら作陶をしている。

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