オランダ人デザイナー・Aliki van der Kruijs （アリキ・バン・デル クルス）が、ナガサキリンネで展示をするのは今回で２回目です。昨年の夏、Claft Council Netherland のプログラムで、筑後地方に滞在し、絣や藍染の技術を学び作品をつくった４人のデザイナーのうちの一人でした。３週間という短い期間でしたが、括りの技術を使い藍で染め、立体的に柄を作り出したオブジェとロープの彼女の作品群は、完成度が高くとても美しく、リンネ終了後に展示を行った私のギャラリーでも人気が高い作品でした。その夏、長崎に来てくれたAlikiが首に巻いていた青いスカーフが「Made by Rain」の作品の１枚で、その美しいシルクの布を広げながら、私たちにそのコンセプトを話してくれた彼女を覚えています。
前回2016年の第４回ナガサキリンネの企画展「Indigo Sharing Blue」でのAlikiの作品。
そして現在、Alikiは、佐賀県の「Creative Residency Alita/ Saga」プログラムの参加デザイナーとして、９月から１１月末まで３ヶ月有田でセラミック作品を作っています。なのでとても嬉しいことに、ナガサキリンネで、今現在彼女が制作を続けている、磁器に有田の雨をうつしたセラミック版の「Made by Rain」の作品も展示できる事になりました。先月末、彼女が長崎に来てくれて、出島の展示会場で打ち合わせをし、その場で長崎の雨でも作品を作って展示する事に決定しました。そして長崎でつくる場所に選んだのは、有田のお隣波佐見町。そう、有田と波佐見の雨を拾って作った作品を、出島で展示するという、素晴らしいコンセプトは決まったはいいものの、それから一向に雨が降らず、ようやく降ってもスケジュールが合わず、、、と今お互い天気予報を見ながら、波佐見での作品づくりのタイミングをうかがっているところです。そしてアムステルダムの週間天気を見てみると、、、雨や曇り空マークがずらり。あの重く灰色の雨雲が恋しいです。
ドイツからの交換留学生ヨハンナ、レジデンスプログラムで一緒に有田に滞在しているオランダ人アーティストの
ヘレン（中央）とアリキ（右）
さて、最後に場所をお伝えすると、「Made by Rain」ナガサキリンネバージョンは、「出島表門橋」を渡った出島内にある「乙名詰所」で展示されます。リンネ当日の２日間、開通したばかりの表門橋を渡って出島に入ってください。料金所を通った先の突き当たりに見える小さな部屋には、かつて出島から世界へと広がっていった陶磁器が生まれたまち、有田、波佐見を、現代のオランダ人デザイナーが、自らの足と作品でめぐった雨の風景がひろがります。
今回展示の実現にあたっては、2015年のMONOJAPANへの出展、前回のIndigo:Sharing Blueに引き続き、オランダ国王大使館のサポートをいただいています。その他「Creative Residency Alita/Saga」のスタッフの方たちも含め、展示の実現のためにご協力いただいている皆様に感謝します。
ナガサキリンネ 松井 知子 ギャラリー「List:」
2015年アムステルダムで開催された、第１回MONOJAPANに、長崎の工芸などを紹介する展示と、「ナガサキリンネ in アムステルダム」で出展。その後、長崎の県産品である「そのぎ茶」生産者の若手6人組「Tsunagu Sonogi Tea Farmers」の、ヨーロッパへの輸出事業のPR担当として３年続けて渡蘭。
第５回ナガサキリンネ企画展
② Made by Rain（アート作品の展示）
会場：乙名詰所
鑑賞料：無料
企画：List: 松井知子
出島表門橋の開通を記念して、オランダ・ハーグ市にアトリエを構えるアーティスト、アリキ・バン・デル クルスの「Made by Rain」の展示を行います。Made by Rainとは、’PLUVIOGRAHY– DRAWING WITH RAIN ’をコンセプトに、日の中で天気が変わりやすく、雨の多いオランダの日常生活を視覚で感じる事を試みた作品です。雨季や乾季がなく、１年を通じて１日の内に天気がコロコロと変わるのがオランダの気候。ここ長崎も雨が似合うまちとして知られています。雨に濡れてしっとり優しく光る石畳の道は、オランダと長崎共通の訪れた人の記憶に残る、美しいまちの風景です。かつてオランダ人が暮らした出島の中で、コンセプチュアルなオランダの「雨」テーマにしたアート作品をお楽しみください。
