「雨」がつなぐオランダと長崎、そして有田 – Made by Rain 前半




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ひと雨降るごとに、冬へと向かう扉を開けていくような、この時期の雨の事を、「秋霖(しゅうりん)」と書くと知り、さらにこの季節が好きになったのはここ最近のことです。「長く降り続く雨」という意味を持つ「霖」の漢字がなんとも愛らしく、散り積もった落ち葉の上に、静かに雨が降り注ぐ森の風景をイメージするだけで、慌ただしく駆け抜けていく時が、少しだけ足を止めてくれるようです。

「長崎は今日も雨だった」と歌われて随分年月は過ぎても、今もやっぱり雨のイメージが強い長崎。雨も旅人にとっては、旅先での思い出に華を添えてくれるようです。出島と深い関わりを持つ国オランダも、実は雨が多いことで有名な国です。ここ数年、真冬にオランダを訪れる機会が増えた私にとっては、足元を濡らす冷たい雨に泣かされながらも、しっとりと色が濃くなるレンガ造りの家々や、街灯に照らされて光る石畳の美しさは、何度見てもため息をついてしまいます。2年前、2週間ほどオランダに滞在した時、時間帯はまちまちでも、ほぼ毎日どこかの時間で雨が降ってたと気づいたのは、旅が終わる頃でした。アムステルダムの街を歩きながら、背の高いオランダ人たちが、ふいに降り出した雨に驚きせず、下を向きながら足早に歩く姿は見慣れた風景です。

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さて、今回ナガサキリンネの企画展で紹介する、オランダ人デザイナー・Aliki van der Kruijs (アリキ・バン・デル クルス)のプロジェクト「Made by Rain」は、そんな雨の多いオランダの日常を、視覚的に表現したテキスタイル作品です。このプロジェクトが生まれたのは、実はとてもパーソナルな理由から。彼女が亡くなったおじい様の形見として、気候や雨量などのデータが毎日記されたカレンダーを、引き継いだことからはじまります。その後彼女は、大学院の卒業制作として、雨を特別に作られたシルクの布に記録していきます。「Made by Rain」と名付けられたその作品は、オランダのみならず、先月光州で開催されたデザインビエンナーレなど、世界各地で展示され、また彼女と共に世界を旅しながら制作を続けるプロジェクトとなりました。雨は嫌われもののイメージですが、降った瞬間に目の前の景色を変え、植物や生き物たちに、生きる力を与えてくれる存在でもあります。そんな雨のほんの一瞬を、Alikiが「celebrate rain」、雨を祝福したいと願い作った美しい作品が、世代を超えて、祖父のカレンダーと共に、家族の大切な記録として残っていく事も、私がこの作品に惹かれる理由のひとつです。
(後半へ続く)

松井 知子 (ギャラリー「List:」)
2015年アムステルダムで開催された、第1回MONOJAPANに、長崎の工芸などを紹介する展示と、「ナガサキリンネ in アムステルダム」で出展。その後、長崎の県産品である「そのぎ茶」生産者の若手6人組グループ「Tsunagu Sonogi Tea Farmers」の、ヨーロッパでの輸出事業のPR担当として3年続けて渡蘭。

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第5回ナガサキリンネ企画展
② Made by Rain(アート作品の展示)
会場:乙名詰所
鑑賞料:無料
企画:List:  松井知子

出島表門橋の開通を記念して、オランダ・ハーグ市にアトリエを構えるアーティスト、アリキ・バ
ン・デル クルスの「Made by Rain」の展示を行います。Made by Rainとは、’PLUVIOGRAHY
– DRAWING WITH RAIN ’をコンセプトに、日の中で天気が変わりやすく、雨の多いオランダの
日常生活を視覚で感じる事を試みた作品です。雨季や乾季がなく、1年を通じて1日の内に天気
がコロコロと変わるのがオランダの気候。ここ長崎も雨が似合うまちとして知られています。雨に
濡れてしっとりと優しく光る石畳の道は、オランダと長崎共通の訪れた人の記憶に残る、美しいま
ちの風景です。かつてオランダ人が暮らした出島の中で、コンセプチュアルなオランダの「雨」テー
マにしたアート作品をお楽しみください。