この夏、アーティストのデイヴィッドと都市景観のプロジェクトをしている昇くんと3人で長崎のまちを歩きました。歩いたのは何の変哲もない、私たちが暮らしているまちです。ただ、目に入ってくる景色はいつもと全く違うものでした。その日、まちの中に、まるで現代アートのようなものがたくさん見えてきたのです。例えば、民家の軒先に何十個も並んだペットボトルや、高く積み上げられた色鮮やかなコンテナはオブジェのよう。色んな素材が継ぎはぎになった家の壁はコラージュ作品っぽいし、配管工事跡の幾何学的な模様はまるで抽象絵画……といった具合に。どれも気にも留めないものばかりですが、それらがまるで意図的に作られた作品のように見えてきたから不思議です。アートを作ったり、都市景観について考えたりする人たちの意識が加わったことによる「視点の転換」。それはまるで、身近な世界を捉え直していくような時間でした。この日はとても暑かったのですが、久しぶりにワクワクして、気付けば何時間も歩いていました。長崎のまちをまた一段と好きになったような気がします。
さて、生きていると色んな日があります。楽しい日もあれば、それと同じくらいに、退屈で代わり映えのしない日も、忙しい日も、心が晴れない日もあるでしょう。そんなとき、ふと、3人でまちを歩いた際の「視点の転換」のことを思い出します。もしかすると、パッとしない日だって、ちょっとした工夫で素敵な1日に変えられるかもしれないと。例えば、昼休みの1時間も捉え方を変えると十分に長い時間といえるでしょう。熱い紅茶を水筒に淹れて公園でピクニックをしてみたり、外国人だらけのレストランに飛び込んで異国の気分に浸ってみたり、誰かに手紙を書いてポストに投函しても素敵です。いつもの暮らし、いつものまち。特に意識せず認識している日々の事柄を「新しい目」で眺めてみると、そこには、まだワクワク・ドキドキすることがたくさん潜んでいるのかもしれません。
ナガサキリンネ 宮崎友理子