企画展「荒木英雄の民藝ーその目と蒐集ー」の展示品を選定しに荒木さん宅に「暮らしの工芸 けやき」の店主庄司さんと、ナガサキリンネのスタッフで行ってきました。昨年11月に急遺した荒木英雄さん。 40年ほど前、庄司さんと出会い、柳宗悦氏の民藝運動に共感、この頃から古民藝のコレクションを始められました。庄司夫妻と共に長崎での民藝運動を牽引し、長年日本民藝協会長崎県支部の会長を努めました。彼の感性とセンスを活かしながら、全国の様々な目利きたちとの交流によって集められた彼のコレクションは大きく4つに分かれます。1.日本の古民藝 2.海外の古民藝 3.アフリカの草ビロード、木、金の造形 4.絵画。後年、千点にも及ぶ自らのコレクションをたくさんの人に見てもらいたいと多くの特に若者を自宅に招いたり、様々なイベントに足を運び、彼の愛しいものたちとの出逢いや、世界各地の民族の歴史、そしてものの見方について語っていました。ナガサキリンネのスタッフや出展者の中にも氏から様々な事を学んだ人も多く、今回の展示では彼の感性とものに対する愛情から、ものの見方やものづくりの視点など、何かを感じてもらえたらと考えています。長崎県美術館県民ギャラリーに彼が蒐集したもの100点を展示いたします。
以下、「暮らしの工芸 けやき」の庄司さんの言葉。
私は遺族の依頼で、これら新旧、国内外混在のコレクション整理を先ず全品のリスト作りから始めた。現物との突き合わせ、そして選別と何日も彼の家に通って作業した。私と荒木さんは四十年来の付き合いである。私が民芸とコーヒーの店けやきを開店して二年目であったか、店に立ち寄った彼は「パリに行ってきた」と半ズボンのハイカラな格好であった。何かと気が合ってすぐに兄弟のような仲になり彼も民芸に熱中するようになった。 蒐集のきっかけとなった本がある。朝日新聞社出版の『世界の民芸』。民芸界、三人の巨匠が世界を旅して見つけた美しい品々をカラー写真とともに紹介している。この本はバラバラになるまで二人で読み、眺めた。蒐集は真剣勝負である。眼は美術館のガラスケースを通して見るだけでは育たない。いいものほしいものは何回も見る。悩みぬいてついに入手。家で洗ったり、机の上に置き毎日眺める。次第にモノが集まる。といっても彼もサラリーマン。高価な名品を買ったのではない。自らの眼と感性だけを頼りに傷の有無も有名無名も関係なく唯見る。私もそうやってモノを集めた。美しいものを求めてインドや韓国にも旅をした。そんな思い出の詰まったコレクションである。