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めぐりつながる場
「エライひとにならんばぞ」。これは亡くなった師匠がいつも言っていた言葉です。職人の世界に飛び込んでまだ間もない頃、僕はこの言葉の意味を“自分の地位を人よりも高くすること”と、捉えていました。しかし、師匠との何気ない会話やひとつの仕事に対する姿勢・準備などが、この言葉の本当の意味を気づかせてくれました。技術専門校を卒業したばかりの僕はどんな作業も出来ると思っていましたが、それは仕事としての作業とは程遠く、自身の無力さを噛み締めながら材料整理や工場の掃除などをする毎日。そんな日々の中、たまに傍らでの手伝いが許され目にする師匠の仕事は「速くて正確」、「美しい仕上がり」、「考えながら淡々と動く」、「優しく時にはちゃんと厳しい」師匠が言っていたことは、このような言葉の頭に『“エライ”をつけてもらえるようなひとになれ。』という意味でした。
昨年の暮れ、師匠が大切にしていた道具を譲り受けることができました。これらはもちろん家具を作るための道具。ですが、人の暮らしを作るための道具でもあります。亡くなられて数年が経ちますが、手にとって見ると、昨日まで使われていたかのように、丁寧に研ぎ仕立ててあり、直ぐにでも使えるように整理されてあり。僕が師と仰ぐひとはやっぱりエライ人でした。この長崎の地で“家具づくり”の職を選び、はじめての会社で師と呼べる人に出会い、その後数ヵ所の木工の会社でお世話になり、いろいろな方々と共に仕事をさせていただきました。そのおかげで僕自身の職人としてのDNA の中に、そのひとりひとりの経験や技術・感性などの雫が少しずつ溜まり、今の僕が在ると思います。本当に感謝です。おそらく、つくり手・つなぎ手・つかい手の方々にもそれぞれが出会いお世話になった“エライ人”がいると思います。また、その方々から受け継いだ伝統や技術、仕事に対する姿勢や思いなどがめぐりつながり集う場に、このナガサキリンネがなればと思います。
この長崎で
はじまりは小さな小さな夢のような種でした。その種が多くの方々の美しいご支援・ご協力のおかげでナガサキリンネという芽が育っています。これからも皆さんと二回三回といろんな花が咲きますように、また五年十年と年月を重ね、この長崎の地にしっかりと太い根をはれますよう引き続きご支援・ご協力をよろしくお願いいたします。
1月18日 松尾 篤行
家具づくり sur+
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