吉田 健宗






「波佐見町」だけど「長崎県」


変なタイトルになってしまったが、よくいわれる事の一つに「波佐見ってあの『佐賀県』のですよね?」がある。僕はうつわの作家になっていろんなところに行く機会が増えそこで話すたびにこう聞かれる回数も増えた。生まれてからずうっと心根は長崎県内にあるつもりなので、そのたびにちょっとだけさみしい気持ちになる。波佐見は最近になって全国的に知られてきたと実感する機会が増えた気がする。(実際は昔からちゃんと全国的知名度はあるのだろうが・・・)しかし長崎県の波佐見町と認知されているか、といえば微妙なところだと思う。まあ隣町が世界的に有名な有田焼の町「有田町」なので勘違いされるのも無理ないのかもしれないが。

ナガサキリンネには 長崎に住む方々に地元の良いモノ良い所を再発見してもらいたいという思いが詰まっている。そして作り手がその生業だけで暮らしていける土壌作りの一環という目的も備えている。と同時に外に向かっていく「発信力」というのもかなり持っていると僕は思っている。「再発見」「土壌作り」はメンバーみんなの願いだと思うが、それに加えて僕は知らない人達に何でもいいので知ってもらうきっかけになればいいなと願っている。とりわけ生まれ育った波佐見という町外に飛び出すまではイヤでしょうがなかった波佐見町を僭越ながらナガサキリンネを通していろんなところに知って頂くお手伝いができたらせめてもの恩返しができるのかな、などひとりで浸っている。



ナガサキ発 長崎行き


ナガサキリンネは前にも言った通り、長崎に住む人達に長崎の魅力を知って頂きたいという思いが詰まっている。それは自分とて例外ではない。僕は陶器作家として独立して8年になるが県内の作り手の方でも、まだまだ知らない方も数多くいらっしゃる。僕も含めて長崎に住む人達が、長崎にある、または長崎に関係あるのに知らない良いモノを、ナガサキリンネを通じてご紹介できればさらにみんなが長崎に誇りをもてるのではないか、と思う。


出展者の方々


ナガサキリンネの第1回は出展者を各実行委員が推薦して声掛けしていく、というものだった。だから知らない人でもほぼ友達の友達という、なんとも手が届く感がそれはそれでよかったがこれから続けていくにあたり、それでは行き詰る事が目に見えてるので第2回からは応募という形式をとらせてもらった。しかし前回出展していただいた方々の多くに、次回の応募を頂けた。これは運営側としては、とてもありがたい。なぜなら一度出してみて、それほど良くない、またスタッフなど運営側に対する不満があれば出さないと僕は思ったからだ。それに応募のメリットとしては (スタッフの)誰もが全く知らなかった新しい才能がひょっこり出てくる可能性があるということ。
今回も色んなところから色んな才能が我こそはと送られてきた。写真を見ているだけで楽しくなる。そしてそれらの色々な才能が互いを刺激し合ってまた新しいモノが生み出されて、それがまた誰かを刺激して、といった嬉しい堂々巡りを発生させてくれまいかと切に願っている。


スタッフの人達


ナガサキリンネに参加してまず思ったのが 他のスタッフのレベルの高さだった。僕は基本、焼き物しか知らずにここまで来てしまったのでその他の事に関しては、恥ずかしいくらい分からない。そんな僕が他のスタッフの方々とやりとりしていくうちに色んな事が僕の中に入っては染み込んだり広がったりで、僕にとってとても勉強になっている。いや、身になってないのかもしれないが、確実に僕の中のどこかで溶け込んで結晶化していると思う。それらがまた製作の場に戻った時に、フラッシュバックのようにモノに写し込まれて焼き付いていたら間違いなくリンネから出来たうつわであり、スタッフのみんなのおかげと考えられなくもない気がする。少々大げさかもしれないが。そんな熱を帯びた中心部だから、初めてのイベントにも関わらず大勢のお客様に足をお運びいただけたのではないか。

そしてそれは第2回へと既に動き出している。2013年の3月 長崎の歴史(むかし)と現在(いま)が融け合った場所で再び皆さんにお会いできるのを楽しみにしています。

12月31日 吉田 健宗



粉引き・ガサガサ・琺瑯・しのぎ
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